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産後クライシス 〜なぜ男と女は出産を機にすれ違うのか〜

ある調査によると、夫婦の離婚率は子供が出来てから、0歳〜2歳までの間に最も高くなるらしい。

子供が出来た後に、夫婦仲が冷め切ってしまうことを俗に産後クライシスと呼ぶ。

matome.naver.jp

たとえそれまでラブラブだった夫婦でも、子供が出来たことをきっかけに一気に関係が悪化することも多いようだ。

人生で最も喜ばしいはずの出産というイベントのはずが、どうしてそのような危機に繋がってしまうのか。

その原因については諸説あるが、私の感覚としては、子供が出来る前と後では男女の「ベクトル」が変わってしまうことに原因があると思う。

つまり、お互いの意識や関心が、出産というイベントをきっかけに違う方向を向いてしまうのだ。

それぞれのベクトルがどのように変化して夫婦関係の悪化をもらたしてしまうのか、順番に見ていきたい。

①恋人時代・出産前

まず、子供が出来る前、特に結婚前や新婚時代は、男と女、それぞれのベクトルは常にお互いを向いている。

もちろん、仕事や趣味、友人といった恋人以外のことにも時間を割いたり、熱中することはあるが、少なくとも2人で過ごしているうちはお互い相手に意識が向くことになる。

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その際に、それぞれの仕事や趣味や友人といった2人の外にある世界のことは、邪魔なものというよりむしろ2人の関係を深める上での話題やネタとなり、スパイスとして機能する。

それぞれが持っている世界から、共通の話題を見つけたり、価値観をすり合わせたりして、お互いを理解していく。

 ②出産後

この関係性が一変するのが、子供が出来た時だ。

ここで、女性のベクトルは一気に夫から子供へと向かう。

以前も、女性のベクトルは夫以外の所、つまり趣味や仕事にも向いてはいた。しかし明らかに前と違うのは、「2人でいる時」にも関わらず、女性のベクトルが夫以外である子供に向いてしまうことだ。

2人の世界に初めて現れる第三者の介入である。

ここで、多くの男性は非常にショックを受ける。

おいおい、俺といるのに俺が一番じゃないのかよ、と男はいつまでもガキなのでいじけてしまうのだ。

一方で年齢的にも仕事が面白くなってきて、男は埋められない寂しさを紛らわすように益々仕事に没頭していく(人によっては遊びに没頭していく。。)

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男は残念ながら、女性のようにすぐに子供にベクトルを向けられるように出来ていない。女性に対しても、相変わらず自分に多くの注意を払ってくれるよう求めるのだ。

男は以前と変わらず、子供のことと同じくらいかそれ以上に、自分の仕事や趣味や価値観の話を女性に聞いてほしいと願う。

しかし残念ながら、子供にベクトルが向いている女性の前では、以前は会話のスパイスとなっていた男性の仕事の話や、趣味の話は急激に色あせて灰色の粉と化す。

なぜなら、女性が彼の話に集中できたのは、夫である男性にベクトルが向いていたからだ。

別に夫のことが嫌いとかどうでもよくなるとかそういうわけでなくとも、多くの場合、子供が産まれた直後の女性のベクトル配分は子供99%:その他1%である。

もはや、夫の世界にまつわる話は、女性にとって自分の関心度1%の情報、まさに埃程度の価値のものに成り下がるのだ。

一方で、男性の方はちょうど仕事も面白くなる時期で、やりがいや手応えを感じている時だ。

時には、家に帰ってからも仕事のことが頭から離れず色々考えてしまうこともある。

しかし、子供が出来たばかりの妻は家で育児に奔走しており、なんとなく自分とは別の世界にいる。

以前は仕事をしていた妻も、今は完全に母親モードで、そんな妻に中々仕事の話をする気にはなれず、仕事のことは自分の中だけで消化しようとする。

例え、仕事の話を持ち出したとしても、子供に99%の意識が向いている妻の前では、自分の話など所詮1%の埃程度の価値しか(ry

すると、妻と共有出来る話というのが少なくなり、会話にギャップが生まれることが増える。

自分は仕事のことで頭がいっぱいでも、それをなるべく出さないようにして、どこか人ごとのような妻の育児の話に耳を傾ける。

妻の話を聞けば聞くほど、妻が自分とは違う世界で違う方向を向いて生きているような気がしてしまい、すれ違っているような気分になってしまうのだ。

一方、妻はこのような夫の気持ちは中々理解できず、仕事ばかりで育児に協力してくれない場合は、夫に不満を持つようになる。

何しろ自分のベクトルはほぼ子供に向いているのだから、そこに関与してくれない存在など無いものと一緒である。

こうして、夫は仕事を中心とした外の世界、妻は子供を中心とした家庭の世界と、完全に夫婦のベクトルはバラバラになり、以前のようにお互いがお互いに向き合い、理解し合うことが難しくなっていくのだ。

結果、一つ屋根の下で同じ空間を共にしているのに、それぞれが意識している先は全く違うという悲劇が生まれる。

結婚に関する名言に、『互いに向き合うのが恋人、夫婦は同じ方向を向く』なんていうフレーズあるが、皮肉にも子供の存在によって夫婦がバラバラの方向を見るきっかけになってしまうのだ。

 ③安定期

これがいわゆる産後クライシスなるもののメカニズムなのだが、これもしばらくすると状況が変わってくる。

まず、ある程度子供が大きくなってくると、妻にも余裕が出てきて、夫のことをケアできるようになってくる。

一方で、夫の方は子供が大きくなってくるにつれ表情や反応が出てくるようになってきて、子供に愛着が出てくる。

遅ればせながら男にも親の自覚というものが芽生え始める。

同時に妻に労いの気持ちが出てきたり、何より、夫婦が揃って子供という同じ方向を見れるようになる。

妻と同じように夫が子供の方も見れるようになると、妻との共通の会話も増え、関係も良くなり、一度失われた妻から夫へのベクトルも少しずつ戻っていくようになる。

さらに、妻が仕事に復帰したりすれば、また外の世界で闘う者同士、共感できることも増えていく。

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このような状況になってようやく、夫婦同じ方向を見るという先の格言が実現するのだ!(涙)

ここまでの道のりは決して平坦ではないし、何よりお互いがお互いの立場を尊重してあげることが不可欠だ。

そうでなければ、産後すぐ離婚という悲しい結末を招いてしまうし、そうでなくとも夫婦のベクトルがズレたまま一生を過ごすという切ない未来が待っていることになる。

このような危機を迎えないためにも、産後、2人のベクトルがずれることは仕方がないことと理解して、相手の立場に立ち、我慢の時を過ごすことが必要だ。

明けない夜はない。出口の無いトンネルはない。

いつかはまた分かり合える時が来る。

産後クライシスを乗り越えた先にも、残念ながら以前の2人のように、お互いに常にベクトルを向いている状態はもう二度とこないかも知れない。

でも、バラバラのベクトルの状態を乗り越えて、2人が同じ方向を向けるようになった時には、これ以上無い強い絆が2人に生まれているはずだ。

この言葉を結びとして、全国の産後クライシスに悩む皆さんにエールを送りたい。