読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

外資系リーマンのゆるコミット

必ずやります、たぶんそのうち

先輩命令でやらされた後輩のナンパが成功して場がしらけた話

後輩が先輩からイジられたり、無茶ぶりされたりするのは、我が国の伝統的な慣習と言える。

全国の後輩クン達は、外見やキャラクターを笑いのネタにされることもあれば、飲み会で大量の酒を飲まされたり、一発芸をやらされたりして日々悪戦苦闘する。

このような「後輩いじり」の定番として、「後輩や若手に女の子をナンパさせる」というものがある。

お酒の席や、その後の帰り道などで悪酔いした先輩軍団が、「おい、お前あの子達に声かけてこい!」と仕事の
勢いさながらの指令を出し、後輩はしぶしぶ玉砕覚悟で突進していく。

後輩クンが戸惑いながらアタックする姿を見て、歳を重ねて、すでにナンパする機会や度胸を失った先輩達は、面白さ半分、優越感半分で、その光景を頬をゆるめながら見つめる。

一方後輩クンとしては、いくら先輩の命令とはいえ、女の子達の前でカッコ悪い所は見せたくない。

幸い、外見やトークにはそこそこ自信はある。

仕事ではおっさん達の下僕として毎日コキ使われているかもしれないが、若さとルックスではあいつらには負けやし ない、という自負もある。

そんなプライド、闘争心を胸に秘め、突撃!

 

トークを頑張る、愛嬌を振舞う、女の子を褒める、ギャグを飛ばす!

 結果…

見事、LINEをゲット!!!

なんなら、その場で飲みに行けそうな雰囲気すらある。

「勝った!俺は期待に応え、成果を上げたのだ!」

達成感と満足感で一気にテンションが上がる後輩クン。

後ろを振り返ればそこには先輩達の目。

結果を出して戻った自分に、賛辞と賞賛の言葉が浴びせられるに違いない。

そう、初めて仕事で大きな商談をまとめたあの時のように。

期待に胸を膨らませる後輩クン。

早足で先輩軍団の輪に帰還し、「あの子たち、一緒に飲んでもいいって言ってますがどうしますか?」と声高らかに成果を告げ、輝いた目をして先輩たちの返答を待つ。

ところが、先輩たちの表情は明らかに曇っている。

さっきまでのバカ騒ぎが嘘のようにしらけている。

そう、先輩たちは別に後輩クンのナンパが成功することなど望んでいなかったのだ。

あっけなくフラれて、恥をかいて、戻ってきた後輩をいじり倒す。

それが彼らが求めていた結末だった。

「今日はそんな感じじゃないからいーでしょ。お前行って来いよ」

そっけなく言う先輩軍団の一人。

結局、後輩クンも気まずくなってその場を静かに後にした。


これは先日会社の飲み会帰りに、実際にあった出来事である。

男というのは実に難しい。

後輩は確かにかわいいし、自分が仕事を教えた後輩が仕事で成果を上げている姿を見るのは嬉しいものだ。

しかし、どこかでライバル心もある。

仕事だって、今は自分の方が出来るとは分かっていても、いつ追い抜かれるかは分からない。

ましてやプライベート、特に対女性関係において、男性的な魅力としては年々外見も勢いも衰えてる自分より、後輩クンの方が若い女の子にモテることもあるだろう。

その事実、現実を少しでも見せつけられたようなこの一件は、先輩軍団にとって全く面白いおかしい物では無かったのである。

そうでなくとも、後輩をいじるという目的でナンパをさせているのに、彼がモテてしまっては元も子も無い、つまらないだけだ。

女性の嫉妬は怖いとよく言うが、男の嫉妬も中々のものである。

実際に、女性にモテるイケメンが出世しにくいという話も聞いたことがあるが、これは何も女性関係に限った話では無く、仕事が出来すぎることによって上から疎まれることも会社ではよくある話だ。

ここで、全ての後輩クン達に伝えたいのは、「後輩たるもの常に道化であれ」ということだ。

本当は、先輩軍団より君たちの方が、女性との出会いも豊富で、女性から見て魅力もあるのかもしれない。

しかしそんな事実を先輩の前で突きつけるようなことはあってはならない。

後輩たるもの、原則は先輩や上司を立て、常に彼らに満足感を提供しなければならないのだ。

特に、若い時からあまり女性に縁が無かったような人に対してはなおさらである。

昔からモテなかった。そのコンプレックスを逆なでするような後輩に、愛情を注げるわけはない。

男はプライドの生き物である。

そしてそのプライドは、あまりにも小さなことで、あっけなく破綻する。

このことは特に会社の上下関係において気を付けなければならない、極めて重要な真理だ。

「後輩のナンパが成功したら場がしらけた一件」はそんなことを改めて実感した一幕だった。