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ITを駆使して起業するヒントは「仲介役」にあり

起業といえばIT、そんなイメージを持つ人は多いと思う。

IT関連のビジネスは、その気になればパソコン1台から始めることが可能で、最初に大きな元手を必要としないため、学生や20代の若者が起業するための手段としてはうってつけだ。

IT以外の手段で起業がなされるケースももちろん多いが、ほとんどの産業においてメジャーな大企業が市場を支配している中で、一から新しいビジネスを作り上げていくのは簡単ではない。

お金も経験も無く、いきなり自動車業界や家電業界に参入するのは不可能だし、比較的参入しやすい飲食業や小売店も、とても競争が激しい上に、そのスケールは小さなものになりがちだ。

これらの産業と比較すれば、ITサービスの領域は参入コストが低く、アイディア次第で大きな可能性が生まれるため、起業となると現実的な選択肢となりやすい。

 

さて、一口にITと言っても様々なビジネスが存在する。

スマホのゲームアプリもITであるし、企業向けのシステム開発もIT業界のそれとして位置づけられる。

そんな中で広く世の中に大きなインパクトをもたらすビジネスが、売り手と買い手を結びつける「仲介役」としてのWebサービスである。

ITを活用した「仲介役」のビジネスは、ITが持つ情報処理能力とネットワークの力を大きく活かし、時には既存の市場を破壊するほどのインパクトをもたらすことになる。

 ここで言う「仲介役」の定義は、下記のようなものだ。

・ある製品やサービスを買いたい人と売りたい人を結びつける

・自分たちは、取り扱う製品、サービスそのものを持っているわけでは無い

 自分たちは物を作ったり、サービスそのものを提供するのではなく、あくまでも需要と供給を結びつける役割に徹することがその特徴になる。

 

事例から見る「仲介役」としてのITサービス

この「仲介役」にあたるサービスとして代表的なものがAmazonを始めとするE-コマースサイトだ。

Amazonは元々は書籍の販売から始まっており、本を買いたい人と売りたい人を仲介するサービスだった。

彼らは自分たちで本を編集したり、出版することは無いが、本の流通を一手に担うことで、出版業界のあり方を大きく変えるサービスとして普及していった。

今では様々な商品を取り扱うようになり、あらゆるモノの買い手と売り手を結びつける市場として日に日に存在感を増している。

Amazonの登場により、従来、百貨店や家電量販店といった小売店で買い物をしていた人たちがWebから物を買うようになり、買い手と売り手の仲介役をWebサービスが果たすようになった。

 このように、買い手と売り手の結びつけ、「仲介役」を果たすようになったWebサービスは他にもたくさんの例がある。

Amazonはあらゆる商品を扱う巨大な市場として機能しているが、アパレルに特化したサービスとしてZOZOTOWNがある。

ZOZOTOWNは服の売り手と買い手を仲介することで、アパレル業界の流通を変えた。

実物を見ずに服や靴を買うという、新しい消費のトレンドがZOZOTOWNによって生み出されることになったのだ。

ZOZOTOWNも、Amazonと同様に自社製品の販売は一切行っていないが、服の売り手と、買い手が使いやすい仕組みを作ることによって、多くのユーザーを獲得していくことになった。

そして、ITの「仲介役」はこれらの目に見える商品のみにとどまらない。

例えばAppleiTunesを提供することで、音楽を売りたい人と買いたい人を仲介する役割を果たし、音楽業界のあり方を変えてしまった。

これまで、レコードやCDという媒体で流通していた音楽コンテンツは、Webから簡単にダウンロードして入手できるようになった。

不動産業界では、リクルート社のSUUMOが、複数の不動産業者と消費者を仲介するポータルとして高い認知度を誇っているし、金融業界でも、ネット証券の登場によって、あらゆる証券会社の金融商品をWeb画面からいつでもどこでも注文できるようになった。

このように、自社で製品やサービスを持たずとも、需要と供給のネットワークを作る事で収益を上げるサービスが増えてきている。

 最近のベンチャー企業の取組みの例では、PairsOmiaiなんていう婚活アプリが出てきて、結婚をしたい人同士を、正に文字通り「仲介」するサービスがユーザーを集めている。

婚活関連ののビジネスは、昔から対面を前提にした結婚相談所は存在していたが、Webでこれを実現し、若者向けに広くPRを実施することで、ユーザーの利用のハードルを大きく下げ、多数の会員を獲得することに成功している。

 また、ユニークなものでは、駐車場を借りたい人と駐車スペースを貸したい一般の方を結びつけるakippaというサービスがある。

www.akippa.com

これは、一般の人が自宅の空いたスペースを他の人に有料で貸し出すことを「仲介」するものである。

駐車スペースを貸す人は、家の余った土地で手間をかけず副業ができ、また駐車場を借りる人は、駐車場が少ない場所でもスペースを確保することが出来、双方にメリットがあるサービスだ。

自力で駐車場ビジネスを始めようとすると準備や手続きが面倒だが、こういったWebサービスがあることで、誰でも余った土地を活用した商売を簡単に始めることが出来る

これらのように、企業と消費者(B to C)では無く、一般の消費者同士(C to C)を「仲介」することによって、新しい市場を生み出すサービスは他にもあって、海外でも先行事例が多い。

アメリカ発のairbnb(エアービーアンドビー)は世界で広く普及しているサービスで、自分の家をホテル代わりに一時的に貸したい人向けのプラットフォームだ。

www.airbnb.jp

自宅の情報をサイトに登録すれば、家を借りたい人から申し込みが出来る仕組みになっている。

部屋を借りる人から見れば、コスト重視で泊まる場所を探したい時、民間ホテルや旅館以外での選択肢として活用することが出来る。

自分の家を貸すというのは一見抵抗がありそうだが、世界190ヶ国以上で実績があり、既に日本にも上陸している。

こういった一般の人同士を結び付けるサービスは、これまで無かった市場を新たに作り出すことになり、場合によってはこれまで存在していた業界を脅かすことに繋がる。

エアービーアンドビーでいえば、ホテル事業者では無い一般の人たち同士が取引を行うことによって、既存のホテル業界のパイを奪っていく可能性を持ってるのだ。

「仲介役」ビジネスが社会にもたらすインパク

このように、ITによって商品やサービスの買い手と売り手の「仲介役」になることで、 革新的なサービスを生み出している企業が多く存在している。

これらのサービスの普及は、それまで「仲介役」として機能していた既存の産業に対して、大いに影響をもたらすことにある。

本や音楽の流通が、Webに取って替わりつつあると叫ばれて久しいが、Amazonやi Tunesの普及によって、既存の書店やCDショップといった市場は縮小の一途にある。

「仲介役」としてのITサービスは既存のビジネスを根本的に破壊するパワーを占めているのである。

そして、このような「仲介役」のビジネスは一度業界リーダーになってしまうとその地位が揺らぎにくい。

本を買おうと思えばAmazonだし、音楽を買おうと思えばAppleというイメージ=ブランドは後からその地位を奪いに行こうとしてもかなりハードルが高い。

「仲介役」として覇権を取ってしまえば、多くの人がそのサービスを使うことになるので、ユーザー数の増加と共にその利便性も高まっていって、着実に成長、拡大していくことになる。

そこには、既存の業界構造をAmazonAppleといった特定のIT企業が変えていって、ビジネスを一社が総取りするという構図が生まれるのである。

 また、注目すべきはこれらの「仲介役」のサービスは、世の中にあふれる「需要と供給のアンバランス」を最適化するという意味で、非常に社会貢献性の高い事業だということにある。

モノやサービスが溢れる現代社会で求められているのは、社会全体で製品、サービスの総量をこれ以上増やしていくことではなく、「生産と消費のバランス」を適正に保つことだ。

欲しがっている人がいるのに、それを見つけられる環境が無い。

それによって、余ったモノが捨てられたり、資源を十分に活用できなかったりする。

Webを通じて、買いたい人、借りたい人を見つけることが出来れば、資源の有効活用に繋がっていく。

生産者と消費者をITがうまく仲介し、需要と供給のバランスを取る事によって、社会全体でムダが無くなるならば、その存在価値は単に利便性の枠を超えたものになりうる。

こういった意味で、ITで売り手と買い手の「仲介役」を果たすサービスは、ビジネスとして大きなチャンスを得られるだけでなく、世の中に大きなインパクトをもたらす可能性を秘めているのである。